病気と処置

■めまい

 
よく耳鳴りに引き続き天井がぐるぐる回るめまいがしたりとか、寝返りをうった後や急に立ちあっがた後にめまいがするなどと言う話を聞きますが、これらのめまいは内耳性のめまいである可能性が高いと思われます。
 
めまいを大きく分けると内耳性めまい、中枢性めまい、とその他のめまいに分ける ことができます。
 
耳の構造は、外側より外耳、中耳、内耳に分かれており、一番奥の内耳には音を聞く神経の蝸牛と、体のバランスをとる神経の三半規管が並んであります。
 
循環障害やウイルス感染などで内耳の働きが落ちて、左右のアンバランスが生じることで起こるのが、内耳性めまいで、有名なものにメニエール病や、めまいを伴う突発性難聴などがあります。
 
めまいを起こす人の半数近くが、内耳性のめまいであると考えられます。
 
一方、中枢性のめまいは、脳出血、脳梗塞、脳腫瘍などが原因するめまいで、手足の痺れとかロレツが回らないとか嚥下障害とか顔面神経麻痺とかの脳神経の症状を伴います。
 
中枢性 めまいの場合は生命にかかわるようなケースもあり、手当てが遅れると障害が残ったりするような事もあります。
 
その他のめまいというのは自律神経の不調により血圧の調節がうまく行かない起立性調節障害や心因性のめまいなどが含まれます。



内耳性めまいの中で、一番有名なのがメニエール病です。めまいを起こす疾患を、総称してメニエール症候群などと呼ばれることもあり、メニエールと言われているもののなかで、本当のメニエール病は結構少ないのではないかと思います。
 
メニエール病は、耳鳴り、難聴、耳閉感などの蝸牛症状の前兆の後、発作性で2~3時間以上続くようなひどい回転性めまいを来し、このような発作を何回も反復する疾患で、他にめまいを起こす、中枢性の疾患が否定された状態のものを指していいます。
 
病態は、内リンパ水腫といって、元々リンパ液で満たされている三半規管に、水ぶくれがおこって発作が起きると、考えられています。原因の詳細は今だ不明ですが、発作を起こす誘因としては体の疲れやストレス、暴飲暴食や不規則な生活、風邪などの上気道感染やウイルス感染などが考えられています。
 
また、心臓・血管障害のある人や高脂血症の人は、循環障害がめまいを引き起こす一つの原因と考えられています。
 
耳鳴りや難聴などの耳症状とともにめまいを起こす疾患には、他に突発性難聴が有名です。
 
突発性難聴は、その病名のとおり、ある日突然耳が聞こえにくくなる疾患で、その程度が強い場合などに回転性めまいを伴うことがあります。
 
メニエール病に比べると、難聴の程度が強く、また難聴の程度が良くなったり、悪くなったりを繰り返すことはなく、一回きりの場合がほとんどです。逆に難聴の程度が変動したり、何度もめまい発作を反復するような場合には、突発性難聴という病名はつきません。
 
他に、頭の向きを急に変えた時や、寝返りをした時、急に振りかえった時に、20~30秒の間、強い回転性のめまいを起こす人がありますが、これも内耳性めまいである可能性が高く、良性発作性頭位眩軍症が疑われます。
 
良性発作性頭位眩軍症では減衰傾向、即ち繰り返し刺激を加えている内に発作が弱くなり、1回目よりは2回目、1日目よりは2日目、と言うように発作の程度・持続とも軽くなっていくという特徴があります。
 
そして多くの人は、2週間から3週間でめまいが消失し、普通に生活を送ることができるようになります。
 
他にも、幼少時に高度の難聴が起こり、何十年か経ってからメニエール病様の症状が出現する、遅発性内リンパ水腫や、耳掻きによる外傷の時にお話した外リンパ婁なども内耳性めまいの疾患です。
 
内耳性めまいが起こっている時には、前庭-眼反射により眼振がおこります。
眼振とは、眼球が一方向に素早く振れる動きです。これによって患者さん本人には、回りの景色が回って見えるのです。
 
そして、めまいがひどい場合は、自律神経の反射により嘔気・嘔吐が おこります。
 
また、耳からは前庭―脊髄路という神経の反射により体のバランス、即ち平衡感覚を調節する働きがあり、めまいの時には体がふらついて、真っ直ぐ歩くことができなくなります。
 
人間は、内耳障害によりめまいを起こすと体が偏倚し、これを元に戻すように立ち直りを起こして、体が倒れないようにする。
 
この偏倚と立ち直りの繰り返しが、体の左右への動揺として他の人にはフラフラしているように見えるのです。