病気と処置

■鼻出血

 
鼻出血は誰でも1度や2度は経験したことがあると思います。たいていの人は5分か ら10分程度で止血しますが、中には長く出血が続く人もあり救急車で病院に駆けつけ るという人もたまにみられます。鼻出血も重症になるケースがあり注意が必要です。
 
同じ鼻出血でも大人と子供ではその出血部位や原因にかなり差があります。



まず初めに子供の鼻出血についてお話します。子供の場合は鼻中隔前端部のいわゆ るキーゼルバッハの部位からの出血が多く、他に下甲介前端などがこれに続く好発部位です。
 
キーゼルバッハの部位は、鼻中隔粘膜の前端で皮膚と粘膜の移行部に近い部位であり、この部位は血管が豊富で尚且つ外部からの刺激を受けやすく、出血がし易いと考えられています。
 
アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、風邪のあとの急性鼻炎などで鼻漏が多いと鼻水が絶えず出て粘膜を傷つけ、これらの好発部位から出血を来します。
 
鼻中隔彎曲症で鼻の入口部の彎曲が強い人も、外部からの刺激を受けやすく、鼻出血のし易い人と言えるでしょう。アレルギーで粘膜の過敏性が亢進している場合にも、外部からの刺激に敏感に反応し鼻出血を来し易くなります。
 
子供さんの場合には強く鼻をかんだり逆にすすったり、あるいは指で鼻をほじったりすることによって、鼻の粘膜を損傷し鼻出血を来す場合が良く見受けられます。
 
また、鼻水が鼻の入口部に溜ま り、炎症を起こしてカヒとなってこれを取ろうとして指を入れたり、いじるため出血を反復する場合もあります。


一方、全身疾患が関与して鼻出血を来す場合もあり、この場合の鼻出血は止血しにく く、且つ反復性で重症の場合がほとんどです。
 
全身疾患としては、白血病、血友病、再生不良性貧血、特発性血小板減少性紫斑病などの血液疾患などがあります。非常に頻回に鼻出血を繰り返し、1回1回の出血時間も長いような場合には、これらの全身疾患も疑い精査をする必要があります。
 
また、大人の鼻出血の場合には、子供の場合とはその出血部位や原因、出血の程度においてかなり状況が異なってきます。出血部位ではやはりキーゼルバッハの部位が最も多いのですが、子供に比べると深部からの出血の頻度がかなり多くなります。 同じキーゼルバッハからの出血であっても動脈硬化や高血圧などがあると、血管は破れ易くまた破れた時には小噴水状に大量に出血することがあり、子供に比べるとかなり重症になる場合もあります。
 
また、深部からの出血では圧迫がきかず、大量出血になることがあります。これらのケースでは耳鼻科に受診してからも止血に苦慮する場合が多く、場合によっては入院になるようなことも時々あります。


鼻出血を来す全身疾患をみても、子供さんの場合とは少し異なってきます。子供の場合と同じくアレルギー性鼻炎や副鼻腔炎はもちろんのこと、他に高血圧症、動脈硬化などの心臓血管疾患に加え、これらの疾患の治療に使われる血栓溶解剤や抗凝固剤も鼻出血の原因になります。
 
他に、慢性肝炎や肝硬変などで肝機能が低下している人では、血小板や凝固因子の生成に肝臓が関与しているために鼻出血を来たしやすいものと考えられます。
また、大人の場合には上顎癌や上咽頭癌などが鼻出血を初発症状として発見されることもあるので注意が必要です。
 
それでは、鼻出血が起きた場合はどうすればよいのでしょうか。まず家庭でできることは圧迫です。水の中へもぐるときのように、鼻の両側から少し強めにつまみます。この状態のまま少しうつむき加減の体勢で、5分から10分安静にして下さい。口の中に流れてくる血液はそっと吐き出してください。この状態のままで鼻根部やその周囲を冷やすことができるのなら少し冷やしてください。
 
これらの処置をしても止血しないよう な場合には専門の病院を受診し止血の処置を受けて下さい。